自転車事故の賠償【打撲骨折・死亡・物損】相場や最高額の事例


自転車は、誰でも気軽に乗れる乗り物ですが、道路交通法上は軽車両であり、自転車事故も自動車事故と同様交通事故として扱われます。

自転車で事故を起こした場合、賠償金額がどれくらいになるのか、よくわからないという方も多いと思います。

そこで、自転車事故の賠償について、請求できる損害賠償の種類や平均相場、過去の最大額などなどを事例も参考にしながら、解説していきます。

自転車事故の賠償はいくら?

自転車事故を起こした場合、被害への賠償について、説明します。

自転車事故の賠償の種類

 

【自転車事故で請求できる賠償の主な種類】


治療費・入院費治療に要した通院や入院費用
通院交通費~通院における交通費
入通院慰謝料~入通院による精神的苦痛に対する慰謝料(傷害慰謝料とも)
後遺障害慰謝料~後遺障害等級に該当する後遺症を負わされたことに対する慰謝料
休業損害~事故の負傷による休業で請求できる減収分の保障
死亡慰謝料~事故で死亡した被害者遺族に対する慰謝料
逸失利益~事故で後遺症を負わない、または死亡していなければ、本来得られていたはずの将来の収入に対する保障

平均や相場は?

自転車事故の賠償額の平均や相場については、被害の状況や請求対象となる賠償の種類によって、金額が変わってきます。

打撲・骨折の賠償は?

自転車事故により、被害者が、打撲やねんざ、骨折を負った場合、
治療費、入通院慰謝料、休業損害、さらには後遺障害慰謝料が請求対象となる場合が主流です。

損害賠償額は、通院開始から完治までの治療期間で決まるため、平均相場はいくらと簡単には言い切れない部分があります。

治療期間が、数週間程度なら、数万~10万円程度ですが、数ヶ月を要する場合には、10万~30万円程度になるケースも多いのです。

自転車事故の賠償については、あくまでも被害の状況によって、金額が決まってくるものなのです。

また、事故により後遺症が残るような負傷を負わせた場合、後遺障害慰謝料も請求できます。

後遺障害は、将来的に長く付きまとうものですから、精神的苦痛も大きく、高額になる傾向にあります。

物損

自転車事故に限らず、交通事故で物的損害が発生した場合の賠償は、加害者へ請求可能です。

これは、民法にも定められています。

物損の賠償は、壊れた物の時価や修理費用等をお金で支払わいます。

注意点としては、物損が、事故で被害を被り起きたことを被害者本人が証明しなくてはならないことです。

具体的には壊れた物の写真を取っておきましょう。また、破損した物は現物として提出するので、捨てずに保管しておきましょう。

購入した際の領収書なども必要になります。

腕時計やスマートフォン、パソコンなどの破損は、事故発生時点での時価が賠償額の限度になります。

自転車事故の賠償の最高額は?

賠償が高額になるケース

自転車事故の賠償額が高額になるケースとしては、被害者が死亡した、事故で後遺症を負った場合です。

賠償請求の中では、「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」「逸失利益」は高額になります。

自転車事故の場合、自転車の速度や、重量、被害者の年齢などによって、歩行者の受ける衝撃は想像以上に大きく、死亡や重い後遺症が残ることが少なくないのです。

賠償が3億になることもある?

自転車事故に負った後遺症が重篤であり、将来的に他人の介護を必要とするような状況、(ほぼ寝たきり状態など)、将来、発生しうる介護費用も賠償責任の対象となります。

事故発生時の被害者の年齢によっても違いますが、判例では2億~3億円以上の賠償金額が認められた事例もあったりします。

自転車事故の賠償の高額事例・判例

自転車事故の賠償で高額となった事例を紹介します。

(出典:価格.com保険)

賠償額9,521万円

11歳の男子小学生が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路で歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)

賠償額9,266万円

男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失など)が残った。(東京地方裁判所、平成20年6月5日判決)

賠償額6,779万円

男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)

賠償額5438万円

男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)

賠償額3730万円

Y運転の自転車が信号機による交通整理の行われていない三叉路の交差点を左折した際、対向進行してきたA(70歳、男性、年金生活者)運転の自転車と衝突した。YとAは転倒し、Aは脳挫傷、脳内出血、急性硬膜下血腫の傷害を負った。病院で緊急手術をしたものの植物状態に陥り、事故の1年4か月後に入院したまま慢性気管支炎を発症したことにより肺炎を併発し死亡した。(平成14年6月11日大阪地裁判決)

加害者と被害者の過失割合は?

自転車対歩行者の事故

自転車事故の賠償で自転車と歩行者の事故の過失割合は、

歩行者が被害者の場合、自転車運転者である加害者よりも過失割合は基本的に加害者の方が大きくなる傾向にあります。

これは歩行者の方が、自転車運転者よりも「立場の弱い」ためです。

自転車は基本、車道走行するものと定められています。
(ある一定の条件では歩道走行が可能になりますが、その場合でも歩道では歩行者が優先されます。)

したがって、歩道で自転車運転者が歩行者と事故を起こした場合は、原則、自転車に責任があるとされます。

自転車同士の事故

自転車同士の出会い頭の事故での過失割合は、基本は5:5ですが、
互いに道路交通法を遵守していた場合に限られます。

右側走行や、無灯、交差点での一時停止無視などをしているなど多く見かけますが、自転車同士の事故の過失割合は、交通法規をきちんと守っているかどうかが、過失割合の加算要素となります。

また、同じ状況でも、相手側が子供や高齢者の場合も、自分側に過失割合が加算されます。

自転車対自動車・バイクの事故

過失割合の考え方は、立場の弱いものを保護することが前提です。

自転車と自動車の事故では、自動車の過失割合が高くなります。また、自転車とバイク(原付含む)の事故の場合も、同様の考えです。

ただ、注意しておきたいのは、自動車と自転車の事故では、自転車側が負う損害が大きくなる可能性が高いことです。

相手は自動車ですから、事故を起こした場合、死亡や後遺症の残る重症になることが多いです。

過失割合では自動車側が100%だったとしても、自動車側が十分な保険に加入してなかった場合など大きな損害が発生しますので、やはり、自転車保険に入ることで、補償の一部をまかなえたりします。

小・中学生・高校生等が自転車事故の加害者の場合

小学生や中高生など子供が自転車事故の加害者になった場合の賠償について説明します。

法的根拠は?

子供が自転車事故の加害者となった場合の法的根拠について解説します。

民事責任は?

民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」となっており、

被害者の治療費や、入院・通院による精神的苦痛等及び物損に対し、お金で賠償する義務が発生します。

ただし、民法712条では、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」としています。

未成年者が、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を有するかどうかの目安が、12歳くらい(中学生以上)と言われています。

加害者が、ほぼ12歳未満の場合は、本人は責任を負わず、監督義務者となる親権者が、その責任を負うこととなります。

つまり、小学生、中学生、高校生などが起こした自転車事故でも、損害賠償が発生します。
裁判で金額は決まりますが、未成年者では賠償金が支払えないようなケースについては、親が責任を負うことになります。

刑事責任は?

刑事責任としては、刑法41条に基づき14歳未満は処罰の対象外です。

ただ、重過失致死罪になった場合は書類送検される可能性がありますので、未成年者は自転車事故での処罰は受けないというのは安易すぎます。

場合によっては罰金刑に処せられ、前科もつきます。

やはり、交通ルールを守ることが大事です。

賠償は免れない

事故により高額な賠償金の支払いを命じられた場合、安易に自己破産をすればよいと考えている方もいるかもしれません。

しかし、破産者が重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権は、免責の対象にはなっていません。

自分もしくは子供が自転車事故の加害者となり、被害者に重大な損害を与えた場合、多額の賠償金の支払いをしなくてはならないことにもなり得ます。

まとめ

以上、自転車事故での賠償についてまとめてみました。

自転車は自動車と違って保険に加入していない人が少なくありません。
万が一、自転車事故で被害者に重大な怪我を負わせたり、死亡させた場合は多額の賠償金が発生することとなります。

また、親が加入している自動車保険の特約には、自転車事故も対象としていることもあるので、確認してみるといいですよ。

最後に、自転車事故を起こさないためには、交通ルールをしっかりと理解し、遵守すること。そして事故を起こした場合は、警察を呼び、対応してもらうことが大事です。

また、もし、保険も未加入で自転車事故を起こした場合は、被害者と示談交渉することになります。

トラブルを避けるためにも、弁護士を通じて対応することが良いですよ。